ナレッジ共有が多くの企業で導入され、その優れた効果を発揮していますが、共有されたナレッジを有効な方法で蓄積できるようになれば、そのナレッジは企業にとって長期的な資産となるでしょう。
もちろん、そのためにはただナレッジを集めるだけではなく、効果的に使用できるナレッジ蓄積の方法を考えなくてはいけません。
この記事では、ナレッジ蓄積で社内情報を活用するためのコツを紹介いたします。これからナレッジ蓄積を進めたいと考えているのなら、ぜひ参考にしてください。
ナレッジ蓄積とは
ナレッジ蓄積とは、ナレッジが共有される前に存在するステップで、ナレッジの蓄積から共有のサイクルがナレッジマネジメントです。具体的には、各社員・各部署のナレッジを一箇所に集め、保存することをナレッジ蓄積と言います。
組織でナレッジが蓄積されれば、長期的なスキルの向上・業務の効率化などの多くの効果が得られるでしょう。
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ナレッジとノウハウの違い
ナレッジと似た言葉として「ノウハウ」がありますが、2つには下記のような違いがあります。
ナレッジとは
企業における有益な情報・付加価値のある経験のことで、知識や知見という意味を持っています。
ノウハウとは
物事を行う上で必要な技術・知識という意味があり、ナレッジよりも実践的な経験のことを指します。
2つの違いを分かりやすく説明すると、学習や共有された情報から手に入れられるものがナレッジで、実際に業務を行う上で手に入れるものをノウハウだと考えると良いでしょう。
ナレッジ蓄積はなぜ重要か
ナレッジ蓄積はナレッジを集め保存することであると分かりましたが、ナレッジ蓄積はなぜ企業に重要だと言われているのでしょうか?
ここではナレッジ蓄積が企業に与える効果をより具体的に紹介いたしますので、その上でナレッジ共有の重要性を理解していきましょう。
業務の効率を上げる
会社に存在している業務の多くは、毎回一連の流れや手順が決まっていると思います。そのような業務を積極的にマニュアル化し、ナレッジとして蓄積しておけば、誰でもそのナレッジを共有できるようになるのです。その結果、多くの社員が効率良く業務を進められ、業務が1人の担当者のみしか対応できない状況である業務の属人化も発生しません。
ナレッジ蓄積のために作成するマニュアルは、可能な限りテキストだけでなく画像なども使用して、より分かりやすいものにすると良いでしょう。一度だけの伝達であればマニュアルを作成するよりも、口頭で教育をした方が早いと感じてしまうかもしれません。
しかし今後も何人もの相手に複数回伝達を繰り返すことを想定すれば、マニュアルを取り入れたナレッジ共有の方が効率が良いと感じられると思います。分かりやすいマニュアルが用意されていれば、教育のための時間も大幅に削減できますし、業務の担当者以外でも同じレベルの教育を実施可能になります。つまり、引き継ぎ時の手間や時間を大幅に削減できるようになり、教育を受ける側も教育者の力量に左右されない均一な知識を得られるでしょう。
経験豊富な社員のノウハウを共有できる
ナレッジ蓄積ができていない状態では、優れたナレッジを持った社員がいたとしても、その能力を他の社員が引き継ぐことが難しくなってしまいます。個人間での引継ぎができたとしても、ごく少数の社員にしかそのナレッジは伝わらないでしょう。ナレッジ蓄積ができていれば、優れたナレッジを組織全体で共有できるため、同等の成果を他の多くの社員が出しやすくなるのです。
また、ナレッジと言うと技術職の技術的な知識が浮かびやすいですが、営業の交渉術なども他の社員と共有可能なナレッジであり、経験豊富な社員たちはいくつもの有益なナレッジを持っていると言えます。
一昔前であれば、そのナレッジは社員が定年までの間に後輩や部下に引き継いでいくものだったのですが、終身雇用制度が当たり前ではなくなった今では、ナレッジの引き継ぎが行われないまま社員が転職してしまう可能性もあるのです。ナレッジ蓄積をすることで、転職による人材流出時に企業が受ける不利益を抑えられるようになるでしょう。
どのような働き方にも対応できる
働き方が多様化した今では毎日チームのメンバーと会社で顔を合わせることが日常の光景ではなくなった企業も少なくありません。リモートワークやフレックス制が導入され、柔軟な働き方を多くの人が選択できるようになりました。
ただし社内で過ごす時間が減った分、社員同士のコミュニケーションの取り方が模索されている段階であることも事実です。そしてナレッジ蓄積よりも先に働き方が変わってしまった結果、組織内のコミュニケーションが低下しトラブルが発生してしまっている企業も少なくありません。
ナレッジ蓄積が確立できていれば、多くの働き方にも対応しやすくなるということです。 遠隔でも組織内でスムーズなコミュニケーションが行われ、必要な情報が共有でき蓄積されている環境が整っていれば、組織全体や社員個人がどのような働き方に変更してもナレッジの不足によるトラブルが発生してしまう可能性を最小限に抑えられるでしょう。
社内情報をマネジメントするコツ
ナレッジ蓄積の重要性をお伝えいたしましたが、文字通りナレッジを蓄積するだけではその効果を十分に得ることができなくなってしまいます。蓄積したナレッジを必要なときに誰もが容易に見つけ出し、活用できるようになっていなければナレッジ蓄積の意味がないのです。
ナレッジ蓄積を効率的に進めるためには、社内の情報をどのようにマネジメントするべきなのでしょうかを考えてみましょう。まず、ナレッジとして今までのデータをそのまま溜め込んでしまうと、非常に活用しにくい状態になってしまいます。たとえ成功事例のデータを見つけても、「このデータは次の業務につなげられるノウハウである」と感じられる社員は少ないでしょう。
営業のためのナレッジ だとしたら「どのような顧客に」「この切り口を使えば」「これだけの成果が期待できる」というような内容であれば、それはただのデータではなくノウハウと言えるものに変わります。ナレッジは蓄積時に検索する側が「どう検索するか」「何を求めて検索するか」を想定してより伝えやすく作成する必要があるということです。そうすれば、ナレッジ蓄積時に期待している効果を十分に得られるようになるでしょう。
また、ナレッジ蓄積は目的を明確にしなくてはいけません。ナレッジ蓄積の概要である「ナレッジを共有するため」などの抽象的なものを目的と定めてしまうと、何を蓄積して何に役立てたいのかがはっきりと分からない状態になってしまうためです。このような状態のままナレッジ蓄積を進めても、社員がナレッジ蓄積を活用することは難しいと言えるでしょう。
ナレッジ蓄積の目的としては組織全体の目的ではなく、細かな作業ごとに定めていくと分かりやすいと言われています。たとえば「例年同じような内容の会議を開き、同じような討論を繰り返してしまっている」というのなら「会議の議事録をナレッジとして蓄積し、会議前に議事録を確認する」と言うルールを設けるのが良いでしょう。
また「発生してしまったトラブルと同じトラブルやミスが繰り返されている」場合には、「トラブル事例・トラブル予防の対策をナレッジとして蓄積し周知することをトラブル発生時に徹底する」などがナレッジ蓄積の目的として明確で多くの社員に分かりやすく、活用しやすいでしょう。 何に活用するか分からない状態でのナレッジ蓄積の導入は絶対に避けるようにしてください。
ナレッジ蓄積ツールの選び方
ナレッジ蓄積は優れたナレッジ蓄積のためのツールを使用することで、ナレッジ蓄積自体の作業がスムーズに行えるようになり、社内でもナレッジ蓄積が浸透しやすくなります。毎日忙しく業務を行なっている中で、ナレッジ蓄積自体に手間がかかると感じられてしまうと、多くの社員にナレッジ蓄積の優先順位を低く設定されてしまう可能性が高いのです。ナレッジ蓄積のために必要な時間はより短く、簡単にできなくてはいけないと言えるでしょう。
ナレッジの重要性が多くの企業で周知されている今では、多くのナレッジ蓄積ツールが流通しており、選択に迷ってしまうこともあると思います。しかしナレッジ蓄積ツールの選び方を理解してしまえばその選択は難しいものではありません。まずは、自分の組織がナレッジ蓄積をする目的・社員はどのように使用するかを明確にしましょう。
そのために必要な機能が揃っており、誰もが使いやすいと感じられるようなサービスを選んでいけば良いのです。使い心地はシンプルであるほど社員に浸透しやすくなりますので、多機能なサービスよりもサクサクと作業が進められるようなものの方がおすすめです。特にパソコンの操作を得意としない社員が多いのであれば、マニュアルを読まなくても操作が可能なくらい導入が容易なツールを探した方が良いでしょう。
またナレッジ蓄積には、膨大な量のナレッジが蓄積された後でも必要なナレッジをすぐに見つけられる検索能力が欠かせません。キーワード検索・全文検索機能を使いやすいかを調べ、ナレッジ蓄積時の分類方法もカテゴリやタグなどの使用ができるかを確認しておきましょう。ほとんどのナレッジ蓄積ツールでは無料の試用期間が設けられていますので、その期間を有効に使い、操作方法などをしっかりと比較検討してください。
ナレッジ蓄積ツールの種類
ナレッジ蓄積ツールは、大きく分けて5つの種類があります。それぞれの種類の特徴を理解しておけば、ツールの選定がしやすくなるでしょう。
ナレッジ蓄積ツール
ナレッジを蓄積するために必要な機能を兼ね備えたツールです。ドキュメントの作成や共有がスムーズに行えます。
ファイル共有・ファイルストレージ
ナレッジをストレージ状に一括して管理することにより、ハードや働く場所に縛られずに業務を行えるようになります。
社内wiki
社内版のwikipediaのような存在で、社内のナレッジをストックして自由に検索しやすい環境を整えます。
社内SNS
プライベートで使用しているSNSのような気軽さと、強固なセキュリティを搭載した社内のコミュニケーションツールです。
グループウェア
メンバー間でお互いのスケジュールを共有するために利用されます。会議などのスケジューリングにかかっていた手間を節約できるでしょう。
おすすめのナレッジ蓄積ツール3選
ここからは具体的に多くの企業で導入されている人気のナレッジ蓄積ツールを3つ紹介しましょう。
それぞれのツールの特徴を理解した上で、自社にぴったりの機能が備わっているものを探してみてください。
1. flouu
flouu(フロー)はさまざまファイル形式で保存され、社内に散在しているナレッジを一箇所に集め、業務を効率化するオンラインワークスペースです。「作業」「コミュニケーション」「活用」の効率を高めるための工夫がされていながら、シンプルでいて使いやすく、操作がしやすいと言うのも人気の秘密のようです。
ドキュメントはリアルタイムで同時に編集・共有可能なため、リモートワーク時にもその場にいるような感覚で複数のメンバーと議論が交わせますし、ChatworkやSlackなどのチャットツールとの連携も可能です。特徴的な検索機能を活用すればドキュメントの本文・コメント・添付ファイル名からの検索も可能で、検索意図に近い情報を集めることができるでしょう。また、豊富な文書連プレートが用意されているため、ドキュメント作成自体も効率的に進められるようになります。
【flouu:契約期間や費用(30日間)】
・スタンダード 500円/1ユーザー
・エンタープライズ お問い合わせ
※試用期間:14日間
※税抜表示
2. Kibela
Kibela(キベラ)はチームとともに蓄積したナレッジを成長させることを目的としています。ユーザー権限を4段階に設定し、グループ内でアクセスコントロールが可能なので、組織のメンバーが多く権限を分ける必要がある場合にも活用しやすいナレッジ蓄積ツールでしょう。
ドキュメントは入力中にプレビュー画像が確認できるため、ブログ記事を書いているような感覚でナレッジを作成できる工夫がされています。Officeソフトとの連携機能を活用すれば、今あるデータをそのまま貼り付けて活用することもでき、優れた検索機能ではさまざまな条件下での検索も可能になっています。
【Kibela:契約期間や費用(1ヶ月)】
・コミュニティープラン 無料/5名まで
・スタンダードプラン 550円/1ユーザー
・エンタープライズプラン 1,650円/1ユーザー(年間契約)
※試用期間:14日間
3. Kintone
クラウド型業務アプリ開発プラットフォームであるKintone(キントーン)は業務プロセスの管理に便利な業務アプリを作成し、さまざまなナレッジ を管理できるようになります。自分でアプリを作成しなくても便利なアプリが「Kintoneアプリストア」に用意されており、ストアからアプリを追加することも可能です。
用意されたスペースでは参加者を選んで情報共有や議論ができるため、組織内のコミュニケーションが活性化しやすくなるでしょう。またスペースにはKintoneユーザー以外も使用できるゲストスペースが作成でき、社外のメンバーとの連絡の場としても活用可能です。
【Kintone:契約期間や費用(1ヶ月間)】
・ライトコース 780円/1ユーザー
・スタンダード 1,500円/1ユーザー
※試用期間:30日間
4. Confluence
知識を集め、共同作業をするためのワークスペースであるConfluenceは、メンバーの居場所に関係なく情報整理やコラボレーションが可能です。会話を促すような工夫がされているため、ナレッジに対してのフィードバックをすぐに確認し、新しいアクションにつなげられるでしょう。
用意されているテンプレートを活用すれば、文書作成にかかる時間も節約できます。
【Confluence:契約期間や費用(1ヶ月)】
・Free 無料/10ユーザーまで
・Standard 600円/1ユーザー
・Premiun 1,190円/1ユーザー
・Enterprise お問い合わせ
※試用期間:7日間
5. Qiita Team
Qiita Teamは、シンプルな操作方法と簡単にナレッジ蓄積が可能なことが魅力のナレッジ蓄積ツールです。
ナレッジ蓄積と共有のハードルを下げることで、こまめな情報共有が実現し、致命的なリスクを回避する効果が期待できるでしょう。ナレッジ蓄積に感じられる手間を最小限に抑えられるツールだと言えます。
【Qitta Team:契約期間や費用(1ヶ月)】
・Personal 500円/1ユーザーまで
・Micro 1,520円/3ユーザーまで
・Small 4,900円/7ユーザーまで
・Medium 7,050円/10ユーザーまで
・Large 15,300円/17ユーザーまで
・Extra お問い合わせ
※試用期間:30日間
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まとめ
ナレッジ蓄積は企業にとって重要なものであり、ナレッジ蓄積がされていない企業では柔軟な働き方や人材の流出に対応できない恐れがあります。
つまりナレッジ蓄積は、これからの時代に欠かせない事柄であると言えるでしょう。
自社に最適なナレッジ蓄積ツールを導入し、スムーズにナレッジ蓄積を進められるようにしてください。